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NASHの進展について

質問

 (1)NASHから慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌へと進展していく病理組織的変遷は写真で示されているのでしょうか。
 (2)日本病理学会はNASH→肝細胞癌を受け入れていて、病理医は積極的にその診断をつけているのでしょうか。(東京都・根岸 鋼、内科)

回答

大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学 鎌田佳宏

 (1)1979年、Adlerらは肥満患者の肝生検組織像で、アルコール性肝障害に極めて類似し、肝硬変へと進展する症例があることを報告し、その後Mayo clinicのLudwigらが、飲酒歴がないにもかかわらず、肝組織所見がアルコール性肝障害に類似した20症例を報告し、この疾患概念をnonalcoholic steatohepatitis(NASH)と定義しました。現在この考えはNASHの疾患概念として一般に受け入れられています。
 BruntらはNASHの組織学的分類にGradingとStagingを導入しています1)(表1)。Gradingは3段階で評価し、(1)脂肪沈着、(2)肝細胞のballooning、(3)小葉内および門脈域内の炎症細胞浸潤の程度を評価項目として総合的に評価しています。Stagingは4段階で評価し、Stage1は小葉中心性線維化、Stage2はStage1+門脈域の線維化、Stage3はさらにbridging fibrosisが加わり、Stage4は肝硬変としています。
 NASHはその半数の肝線維化が進行性であり、肝硬変、肝発癌へと進展しうる疾患です。しかし、今のところご質問のような病理組織的変遷についての写真をきちんと提示している文献はないようです。NASHの組織に関する報告はいろいろとあり、NASHの肝線維化が進行性であることには一定のコンセンサスが得られているものと思われます。2)

表1:Bruntの分類(文献1)より引用)
活動性(Grading) Steatosis Ballooning Inflammation
Grade1(mild) 〜1/3 時々小葉中心性に 軽度
Grade2(moderate) 1/3〜2/3 小葉中心性に明らかに 中程度
Grade3(severe) 2/3〜 著明 高度

病期(Staging) --
Stage1 小葉中心部の線維化
Stage2 stage1+門脈域の線維化
Stage3 bridging fibrosis
Stage4 肝硬変

 日本での症例については前マリアンナ医科大学病理学教室の前山史朗先生がNASHの線維化進展の組織像を提示されています。3)
 (2)このご質問につきましては日本病理学会に直接質問させていただき、金沢大学医学系研究科形態機能病理学、中沼安二教授よりコメントをいただきました。中沼教授によると『NASHに肝細胞癌が合併することは知られておりますが、その実態はまだ不明です。とくに、NASH症例で詳細な経過観察後に発癌した症例があまり報告されていません。病理学会はこの件に関しまして、特別の見解を持ってはおりません。』とのことでした。まだ症例数も少なく、確定的なことがまだ言えないというのが現状のようです。2008年の5月に予定されている第97回病理学会では非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を主題の一つとして取り上げており、これから日本におけるNASHからの発癌ということについても何らかの病理学的な情報が発信されていくのでないかと期待されます。
 この場をお借りしまして、貴重なコメントをいただいた中沼教授に深謝いたします。

文献

1)Brunt, EM., et al. : Nonalcoholic steatohepatitis definition and pathology. Seminar Liv. Dis., 21, 3〜16(2001)
2)Matteoni, CA., et al. : Nonalcoholic fatty liver disease : A spectrum of clinical and pathological severity. Gastroenterology, 116, 1413〜1419(1999)
3)前山史朗:非アルコール生脂肪肝炎(NASH)の生検診断、病理と臨床、23、256〜263(2005)

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