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ヘルペスウイルスについて

質問

 水痘は、全身に発疹が出現しますが、単純疱疹は、口腔口唇および陰部に限られます。また、帯状疱疹は一般的に一生に一度ですが、単純疱疹は、何度も再発します。これら2つのウイルスの症状発現の違いは、いかなる理由によるものでしょうか、ご教示ください。(静岡県・内科)

回答

東京慈恵会医科大学附属青戸病院 皮膚科教授 本田まりこ

単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスとの違い

 ヘルペス(疱疹)とはギリシャ語より由来し、小水疱が多発し集まった状態を意味する。主に、単純ヘルペスと帯状疱疹を指している。単純ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)の1型または2型の感染により、帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(varicellazoster virus, VZV)により発症する。HSVは主に接触感染で感染し、HSVの型に関係なく、HSVのエンベロープを介して皮膚や粘膜のどこにでも感染するが、粘膜や皮膚の傷の部位からHSVは侵入し、知覚神経を逆行して知覚神経節の神経細胞核内に潜伏し、発熱、日光暴露、過労、性交、歯科治療などの刺激や細胞性免疫の低下などで潜伏ウイルスが増殖してHSV−1は顔面を中心として上半身に再発(回帰発症)し、HSV−2は性器を中心として下半身に再発を繰り返す。知覚神経節に潜伏したウイルス量が多い部位ほど再発しやすいといわれている1)。したがって、初感染部位に再発することが多い。
 一方、VZVは、初感染として水痘になるが、飛沫感染し、気道粘膜から所属リンパ節に侵入し、リンパ節内のメモリーT細胞に感染し、数時間後には皮膚に達する。皮膚の感染防御との戦いから約14日後ウイルス側が勝利するとウイルスが皮膚で増殖しウイルス血症を起こして水痘になる。主に皮膚の水痘疹から知覚神経に侵入し、知覚神経節の神経細胞やそれを取り囲む衛生細胞(グリア細胞)に潜伏感染する。数年から数十年後にVZVの免疫記憶細胞が低下し、さらに過労や悪性腫瘍、糖尿病、ヒト免疫不全ウイルス感染などで免疫力が低下するとある領域の神経節内に潜伏していたVZVが再活性化し知覚神経やシュワン細胞を通ってその神経支配領域に帯状疱疹が現れる。HSVもVZVも同じヘルペスウイルス仲間であるが、上記のように初感染や再発の機構も異なっている。なぜ、HSVのほうが再発頻度が高いのかは不明であるが、潜伏部位が末梢にまで突起を出している神経細胞のなかにHSVは潜伏するので、外界の刺激を受けやすいためともいわれている2)。また、三叉神経節のウイルス量を検索したPevensteinらによると圧倒的にVZVよりはHSV−1が潜伏感染しているためHSVのほうが再発しやすいと推論されている3)

文献

1)Sawtell,NM., : J. Virol., 72, 6888〜6892(1998)
2)Anderson, WA., et al. : Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 107, 628〜632(1961)
3)Pevenstein, RS., et al. : J. Virol., 73, 10514〜10518(1999)

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