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静注抗生剤の皮内テストについて

質問

 以前から抗生剤の静注を初めて使用する患者には、皮内反応を実施しておりましたが、最近は皮内反応自体に意味がないとして、皮内反応をせずに投与することが多いと聞きました。抗生剤に対するアレルギー反応がどれくらいの頻度で発生するのか、詳細は分かりませんが、仮にアレルギー反応を起こして不幸な結果になった場合、家族等に説明する際に皮内反応を実施していた場合とそうでない場合では、医療者側はどう説明するのでしょうか。また、司法上はどのような問題があるか(またはないのか)、実地医療面から解説いただければ幸いです。(兵庫県・透析科)

回答

東京女子医科大学感染対策部 感染症科教授 戸塚恭一

 社団法人日本化学療法学会は一般会員からの静脈注射用抗菌薬の使用にあたる皮内反応の妥当性についての意見を受けて、2001年7月に臨床試験委員会内に皮内反応検討特別部会を設置して、わが国において注射用抗菌薬であるβラクタム系薬、ニューキノロン系薬および一部のグリコペプチド系薬での静脈内投与前の皮膚反応検査の実施の意義について検討を開始した。その後2年間にわたる慎重な検討の結果、βラクタム系薬のアナフィラキシーショックの発生は皮内反応が通常行われていない米国のほうが皮内反応を行っているわが国よりむしろ少ないこと、皮内反応を行っていないバンコマイシンにおけるアナフィラキシーショックの発生頻度が、皮内反応を行っているβラクタム系薬での発生頻度と大きく変わらないこと、皮内反応陰性例からもショックが発生していることなど皮内反応がショックの予知をしているとは言い難いことが明らかとなった。さらに、皮内反応陽性例が真の陽性例に比べて圧倒的に多いことなどから治療に必要な抗菌薬が投与されないことによる患者の不利益のほうがむしろ重大な問題であると認識している臨床医が多いことなども明らかとなった1)
 そのことから2003年6月に前記注射用抗菌薬における皮内反応を中止し、極めて低頻度ではあるがアナフィラキシーショックは発現するので、事前に抗菌薬によるショックを含むアレルギー歴について必ず問診を行うこと、静脈内投与開始20〜30分間における患者の観察とショック発現時の対処の備えを行うことを提言した。この提言を受けて厚生労働省は薬事・食品衛生審議会の専門委員による検討を経て、2004年10月に添付文書における「使用上の注意」の改訂を行った2)
 それは「本剤によるショック、アナフィラキシー様症状の発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。(1)事前に既往歴などについて十分な問診を行うこと。なお抗生物質などによるアレルギー歴は必ず確認すること。(2)投与に際しては、必ずショックなどに対する救急処置のとれる準備をしておくこと。(3)投与開始から終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。とくに投与開始直後は注意深く観察すること。」などを示し、皮内反応実施の項目を削除した。専門委員による検討においては、アレルギー歴を有するものについては当該医薬品の投与は原則として行うべきではないが、治療上で他剤に変更できない場合などに、皮膚反応を行って投与する事例も存在すると考えられるので、実際の皮膚反応の実施方法を含めて日本化学療法学会がガイドラインを定めて広く医療関係者に周知するのが適切であるとされたため、日本化学療法学会によるガイドラインが公表されている3)
 したがって、皮内反応を含めてアナフィラキシーショックを確実に予知できる方法がないので、今後、アレルギー反応を起こして不幸な結果になった場合には、皮内反応の有無は問われないことになり、また皮内反応を行っていたことによっては免責とはならずに、問診において抗菌薬に対するアレルギー歴がとってあるか、点滴開始後に十分な観察がなされたか、救急処置が適切に行われたかなどが問われることになると思われる。司法上も同様と考える。

文献

1)斎藤厚ら:社団法人日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会報告、日本化学療法学会雑誌、51、497〜506(2003)
2)注射用抗生物質製剤等によるショック等に対する安全対策について、厚生労働省医薬食品局、医薬品・医療用具等安全性情報(No.206)2004年10月
3)斎藤厚ら:社団法人日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会、抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版)

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