HOME > お役立ち情報 > 他科医に聞きたいちょっとしたこと > no.570 vol.55「続 他科医に聞きたいちょっとしたこと(I)」 > C型、B型肝炎の感染経路

C型、B型肝炎の感染について医療機器(胃、大腸ファイバーでの生検)や生物的感染経路、例えば蚊による感染の機会などはあまり論じられてはいませんが、それはないとは言い切れないと思えます。
何かそのエビデンスがあるのでしょうか。(大阪府・北野年弘、外科)
周知のごとく、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)はともに経血感染するウイルスであり、急性肝炎や劇症肝炎を起こしたり、キャリア化すると慢性肝炎から肝硬変へと病変は進展し、肝細胞癌の併発が高率に認められることより、これらの肝炎ウイルスの感染予防は極めて重要です。また、HBVワクチン、HBグロブリンの普及によりHBV感染は防止可能となりましたが、HCVワクチンは未だ未開発です。
HBV、HCVの内視鏡機器を介する感染は以前より報告されており1)、使用後の内視鏡機器の消毒はHBV、HCVのみならずHIV、結核菌、MRSA、H.pyloriなど感染症を発生するすべての微生物が対象となります。とりわけ内視鏡前にHBs抗原、抗体ともに陰性の189例を6カ月間follow-upした検討では、HBV感染率は16/189(8.5%)であったこと、グルタルアルデヒドを使用したルーチン消毒で内視鏡検査にもとづくHBV感染が防止できたことなどが報告されています。最近では内視鏡機器の消毒方法に関するガイドラインが作成され2)、グルタルアルデヒドを用いた消毒方法が標準化されてきています。具体的には、確実な消毒薬として高水準殺菌スペクトルを有するアルデヒド系:グルタラール(グルタルアルデヒド、R2〜3.5%ステリハイド、ステリゾールなど)が有効で、通常15分以上浸漬し、その後の十分な水洗(リンス)が必要です。さらに、内視鏡検査前には被検者の採血にて梅毒、HBV、HCVなどの検査をルーチン化して、これらの検査が陽性の者あるいは緊急内視鏡症例、感染症未検査症例では感染症扱いとして、厳重な内視鏡機器の洗浄、消毒を行います。
HBV、HCVが蚊などの節足動物(昆虫)の咬刺によってヒトに感染を起こすか否かについては外国を中心として少数の報告があります。これらはほとんどが熱帯地域での研究成績であり、昆虫の咬刺を介してHBV、HCV感染が起こることを直接的に証明した報告は、調べ得る限りでは認められません。しかし、南京虫によるHBV陽性者の皮膚病変がHBV感染の原因になる可能性や3)、HCV陽性者を咬刺したイエ蚊の体内からHCV RNAが検出され、イエ蚊によるHCV感染の可能性を示唆する報告4)もありますが、否定的な報告も多く見解の一致を見ていません。今後の研究成果が待たれます。
1)春日井達造ら:消化器内視鏡検査とB型肝炎ウイルス(HBV)感染との関連について(第1報)、Gastroenterol. Endosc., 27, 2727〜2733(1985)
2)小越和栄:消化器内視鏡機器洗浄・消毒法ガイドラインと世界学会Minimal Standardsについて。Gastroenterol. Endosc., 41, 220〜222(1999)
3)Vall Mayans, M., et al. : Risk factors for transmission of hepatitis B virus to Gambian children. Lancet, 336, 1107〜1109(1990)
4)Hassan, MI., et al. : Experimental demonstration of hepatitis C virus(HCV) in an Egyptian strain of Culex pipiens complex. Journal of the Egyptian Society of Parasitology, 33, 373〜384(2003)