HOME  >  お役立ち情報  >  他科医に聞きたいちょっとしたこと  >  no.580 vol.56「続 他科医に聞きたいちょっとしたこと(I)」  >  インフルエンザ迅速診断キットの判定について

お役立ち情報

インフルエンザ迅速診断キットの判定について

質問

 夏場にインフルエンザウイルス感染症が季節はずれで見つかる場合があるが、検査時の偽陽性の可能性は考慮されないのでしょうか。
 また、流行時に確実と思える症例で、逆に陰性の場合、発生からの時間、手技、条件(温度など)など考えられることを教えてください。(京都府・内科)

回答

原土井病院 臨床研究部部長 池松秀之

原理

 検査にはそれぞれ感度、特異度があり、一般に感度100%、特異度100%ということはなく、偽陽性、偽陰性が起こります。インフルエンザウイルスの診断に用いられているキットのほとんどは免疫クロマト法を原理としています。これは、インフルエンザウイルス抗原に結合する抗体を用いて、抗原と抗体によって形成された免疫複合体を可視化するものです。ニトロセルロースなどの膜上に抗ウイルス抗体が固定されていて、ウイルス抗原と標識された抗体により形成された免疫複合体がトラップされると、ラテックス粒子や金コロイドなどの抗体に付けられた標識物質が膜に固定されている抗体に沿ってラインとして肉眼で確認することができます。

偽陽性

 抗原がなければ免疫複合体は形成されないはずなので偽陽性はないことになります。しかし実際には、標識された抗体が抗原と免疫複合体を形成していないにもかかわらず、膜上の抗体にトラップされてしまうことがあるようです。その原因についてはよく分かっていませんが、頻度は低くなるように各製品とも工夫されています。現在市販されているインフルエンザの診断キットの多くは特異度が高く、夏場に陽性と出た場合も、真のインフルエンザである場合が多いと思われます。しかし、偽陽性を否定することもできません。確認にはウイルス分離を行うことが必要です。臨床現場での対策としては、別のキットを用いて再検をすることが考えられます。複数のキットで陽性である場合は真のインフルエンザの可能性が高いと考えられ、逆に不一致の場合は偽陽性の可能性が高いと思われます。別のキットが手元にない場合には、検体採取部位を変えて別の検体で再検するのも一つの方法だと思われます。

偽陰性

 流行時に臨床的にインフルエンザと思える症例で診断キットの結果が陰性の場合には偽陰性の可能性も考えなければなりません。診断キットの感度は向上していますが、やはり偽陰性は日常的によく見られます。偽陰性の要因として発症から検査までの時間は重要です。発症早期で検体に含まれるウイルス量がまだ少ない時期では免疫複合体の形成が少なく肉眼で確認できないことになります。ウイルス分離によりインフルエンザが確定診断された症例でいくつかのキットを用いて調べた成績では、発症から24時間以内では約10%がキット陰性でした1)。実際の臨床の現場でも翌日再検したら陽性となることはしばしば経験されると思います。発症から24時間以内の症例で偽陰性を疑うときは時間をおいた再検が有用でしょう。
 偽陰性の原因として検体採取の手技も重要な因子です。一般にインフルエンザの場合は鼻腔拭い液と鼻腔吸引液のほうが咽頭拭い液より高い感度が得られます。咽頭拭い液の場合、広く十分に拭うことが肝要で、不十分な拭い方であると偽陰性となってしまうことがあります。感度を高めるため方法として一般的ではありませんが複数の部位から検体を採取してキットを実施することも一つの方法として考慮されるかもしれません。温度や湿度などの影響は検体の処理が速やかに行われる場合は考える必要はないでしょう。

文献

1)Ikematsu, H., et al. : Clinical evaluation of an immuno-chromatography test kit, Capilia FluA,B, for rapid diagnosis of influenza. In : Kawaoka, Y., ed. Options for control of influenza V. Amsterdam, The Netherlands : Elsevier Science Publishers, 372〜375(2004)

「お役立ち情報」トップへ 「お役立ち情報」トップへ

ページの先頭へ