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思春期の反抗期の定義と意義

質問

 思春期の反抗期の定義と意義を教えてください。不良化しないために気をつけることも教えてください。参考になる他科でも読みやすい本があれば教えてください。(香川県・内科)

回答

東京大学大学院医学系研究科 こころの発達医学 准教授 金生由紀子

 思春期には身体量の急激な増加(いわゆる思春期スパート)および第二次性徴という身体的変化が生じると同時に、それまでのように親に全面的に依存をするのではなくて反抗的な態度をとるようになります。そこで、この時期が思春期の反抗期と呼ばれます。年齢による厳密な線引きは難しいのですが、中学生年代を中心として高校生年代の前半くらいまでが該当すると思われます。第二反抗期との表現もしばしば使われます。3歳前後に親の言うことに初めて反抗すると共に「なぜ?」という質問を連発するようになり、その時期が第一反抗期と呼ばれるので、それに対して第二反抗期というわけです。
 思春期になると抽象的な思考力が伸びて自分を客観的に見ることができるようになり、親に対しても同様の視線を向けて批判的になります。思春期の身体的変化も自分への意識を高めることになります。そして、親から自立しようとするのですが、一方で親に依存したいとの欲求も高まります。この相反する感情の間で子どもは揺れ動き、親もそれに振り回されがちです。このために不安定な時期に見えますが、「子ども」としての完成をみた自分をいったんくずした上で、自分は何者かを問うて、「大人」としての自分の発見を目指していく発達の過程なのです。このように自我の確立に向かうという反抗期の意義は極めて重要です。
 どれくらい反抗的な態度をとるかは個人差があるもののこの時期のこころの変化は当然のことです。同時に、親をはじめとする周囲の人々が不適切な対応を重ねると行動上の問題を引き起こす傾向にあるのも事実です。親に依存したいけれど素直に依存できず、受け入れられていると確認するために反抗して不良行為に走ってしまうこともありえます。したがって、こころの発達における反抗期の意義を十分に理解して、子どもの訴えをきちんと受けとめることが必要です。子どもが自分の存在全体を受け入れてもらえていると安心できるようにします。子どもが自分らしさを肯定的に感じて自尊心を持てるような働きかけもします。努力すれば乗り越えられそうな課題に立ち向かって達成感を得られるような促しもよいかもしれません。子どもの話にしっかり耳を傾けますが、決して子どもの言いなりになるわけではありません。反抗にあまり動じず、子どもが受けとめてもらったという安心感を得て自己コントロール力を伸ばすのを見守るのが基本だと思います。
 このような対応が十分に機能するには、そもそも親を心の拠り所として安心することによって外部に向かうことができた第一反抗期を体験していることが前提だと思います。つまり、思春期になってから慌てて対応するのではなくて、それまでの発達の経過を充実させるということです。なお、自閉症スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害などの発達障害の場合には脳の特性として親子などの対人関係や自己コントロール力の発達に遅れや偏りがあるので、発達の経過を通じてそれを考慮する必要があります。
 脳とこころの発達を考慮して自我の確立とその発達支援について分かりやすく解説した本があればと思って探したのですが、残念ながら適切なものを見つけられませんでした。手前味噌ですが、こころの発達と精神医学的問題を概説した文献を代わりに挙げておきます。

文献

1)金生由紀子:ライフサイクルと精神医学、精神医学を知る、金生由紀子・下山晴彦編、東京大学出版会、43〜70、2009年

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